ユーミンSPを
振り返る

◇管理人の記憶を頼りに「ユーミンスペシャル」を振り返る企画◇

■ ユーミンスペシャル:2000年1月3日放送分(第221回)

 それは2000年1月3日の放送での出来事。
 ミレニアムを迎えて一発目の放送を楽しみにしていたリスナー一同は、オープニングの伊集院の言葉に耳を疑った。


 「伊集院光のUP's ミレニアム特別プログラム 永久保存版 松任谷由実ベストコレクション」!

 (『中央フリーウェイ』をバックに)
 新年明けましておめでとうございます。伊集院光です。
 遂にやって参りましたね、西暦2000年です。

 この新しい千年の幕開けとなります今夜の月曜UP's、通常の番組を少々変更致しまして、松任谷由実さんの曲で綴る120分のスペシャルプログラムをお送りする予定です。

 1972年に「荒井由実」の名前でデビュー。
 その後、80年代・90年代の音楽界を常に先頭で駆け抜けた歌姫、ユーミンの数々の作品の中から、UP's音楽委員会の選定した選りすぐりの10曲を今夜はカウントダウン方式でお届け致します。

 それではさっそく参りましょう、第10位!

 (前奏)
 松任谷由実ベストコレクション、堂々の第10位は、『リフレインが叫んでる』。

 〜(『リフレインが叫んでる』)〜

 (間奏)
 1988年11月26日発売、アルバム『Delight Slight Light Kiss』より『リフレインが叫んでる』にリクエストを下さったのは、品川区の”荒井時代を知らない子”さん。
 「高校2年生の時、お付き合いしていた3つ年上の大学生の彼がくれた『Delight Slight Light Kiss』のアルバムが、ユーミンと私との出会いでした。その後色々あってその彼とは別れてしまいましたが、今もこの『リフレインが叫んでる』を聞くと彼のことを思い出してしまいます。」


 〜(『リフレインが叫んでる』続き)〜

 (ジングル:伊集院光のUP's 深夜の馬鹿力 ミレニアム特別プログラム 永久保存版 松任谷由実ベストコレクション!)
 (1本目のCM)


 …「何これ?」、「どうした伊集院?!」、「ってかなんでユーミン?」
ギャグなのかマジなのか、何がなにやら分からずに戸惑うリスナー達。

 インターネットでは、当時最大の伊集院系コミュニティサイトであった「イジューインネット」のチャットコーナーが、大挙として押し寄せたリスナーによってパンクを起こし、局地的な混乱状態をも生み出した。

 これが今も語り継がれる2000年正月の悪夢、伝説の「ユーミン スペシャル」その始まりである。



 多くのリスナーに混乱を与えたオープニング。
 しかし、そこは「深夜の馬鹿力」リスナー、オープニングから珍奇な放送をされるのには多少なりとも免疫がある。

 「松任谷由美 ベストコレクション」なる放送が続く不安の中でも、「長い前フリだけど、CM明けにはネタばらしをしてくれるだろう…」。
 そんな気持ちを誰もが持っていたはずである。

 が、1本目のCM明け。悪夢はまだ終わらない…。


(伊集院光のUP's ミレニアム特別プログラム 永久保存版 松任谷由実ベストコレクション!)

 2000年最初のUP'sは、「松任谷由実 ベストコレクション」と題しまして、ユーミンの名曲を次々とOAしていくワケなんですが…、先ほどおかけした第10位の『リフレインが叫んでる』なんですけれども、実はこの曲シングルカットはされておりません。
 曲の中でも紹介しました通り、1988年『Delight Slight Light Kiss』というアルバムの中に含まれていた一曲なんですが、これがですね、コマーシャルなんかに使われまして大ヒットするワケであります。

 又この松任谷由実さん、この88年の4月にですね、伝説の「松任谷由実のオールナイトニッポン」を開始しているワケであります。
 私、大変憧れておりました。

 さ、続いては第9位です。


 (前奏)
 第9位です。『あの日に帰りたい』。

 〜(『あの日に帰りたい』)〜

 (間奏)
 この曲は1975年に発売されました。
 TBS系のドラマですね、『家族の秘密』の主題歌になりまして、ユーミンの数ある名曲の中でも初のナンバーワンヒットになった作品です。


 〜(『あの日に帰りたい』続き)〜

 大田区のペンネーム”飛行機雲”さん、北海道は函館市のペンネーム”荒井正隆”さん、愛知県ペンネーム”青春の忘れ物”さん、三重県のペンネーム”PENTAX”さん、世田谷区の”タナカケンイチ”さん、浦和市の”ヤマグチリョウゾウ”さん他のリクエストで、第9位、『あの日に帰りたい』でした。


 (この後、同様に第8位『春よ来い』、第7位『恋人はサンタクロース』の発表が続き、ジングル、そして2本目のCM)


 流石にこの辺りに来ると、リスナーの反応も徐々に分かれてくる。

 何しろ番組開始から20分が経過しようとしているにも関わらず、一向に終わる気配のない「松任谷由実 ベストコレクション」。
 加えて、通常の放送とは違うジングルまで作る徹底ぶりである。

 番組内容を真に受けて寝てしまう者。
 それでも、長い前フリだと信じて聞き続ける者。
 ユーミンの番組だと思ってたまたま聞いてしまった人、等など…。

 いずれにせよ通常の放送を楽しみにしていたリスナーにとって、ますます不安は募るばかりである。

 こうして、誰もが不安と戦いながらもこの悪夢の終わりを待ち続けた。
 そして、2本目のCMが明ける…


(伊集院光のUP's ミレニアム特別プログラム 永久保存版 松任谷由実ベストコレクション!)

 さて、続いては第6位!



 …と、まぁ冗談はこれぐらいにしてですね。
 えぇ…、あの〜、冗談はこれ…、ノリツッコミみたいなヤツですよ。
 えぇ、と言うことで、そろそろいきましょうか!

 「伊集院光のUP's 深夜の馬鹿力」!
 (番組テーマ曲)


 お正月なんではしゃいじゃった…。

 えぇ、よく親戚集まるとはしゃいじゃう子いるでしょ。
 いつもはお父さんが怖くてそ〜っとしてるんだけど「親戚がこれだけ来てっからお父さんも怒んないんじゃないかな」と思ってお父さんのあぐら掻いてる上のところであぐら掻いてさ、ピーマンの肉詰め手で握ったりする子いるでしょ。
 あれと一緒いっしょ。



 良かった…。終わった…。長かった…。
 いつもと同じ伊集院のトーン、そして構成渡辺氏の笑い声…。
 何とも言えない安堵感がリスナーの間を包んでいく。

 番組開始から実に22分後のネタばらしである。
 正味22分…、しかし長く険しい22分であった。


 誰も予想だにしなかった「松任谷由実 ベストコレクション」。
 多くのリスナーが不安と戦いながら、ひたすらネタばらしを待った22分間…。

 しかし、伊集院はあっさりと言い放つ。


 俺はね、企画会議の段階でね、「120分行ける」って言ったのよ。

 ギャグ的にはまるまる、伊集院さんのUP'sを楽しみにしてる人が「何を正月やんのかな?」と思ったら…、本意気で「50位から行く!」って俺は言ってたもん、絶対。

 ユーミン、ゲストでちゃんと…、ゲストのユーミンがちゃんといて、「第1位!」って言う最後の段階で、「第1位はユーミンさんから発表してもらいましょう」っつって、ユーミンが「『真夏の夜の夢』です、なんて言ったりしてね!」って言う…。
 「オイ、終わってるよ!」って言うカタチで。
 ほいで…、アレだよ、ねぇ「歌うヘッドライト」みたいな。

 そーいうのに行くのが俺のベストなんですけどね…。



(注:「歌うヘッドライト」=当時、UP'sのすぐ後に放送していた番組)


 流石だよ…。
 これこそ深夜ラジオのカリスマ、伊集院光…。
 誰もが意表を突かれた、こんな企画ができるアンタは天才だよ…。

 と、思うのはまだ早い。
 この非常事態に臆すること無く、きちんと製作サイドの意図を察して行動している人はいるのである。


 いや、あのね。
 正月早々だから何やってももう多分ね、聞いてないんじゃないかなぁなんて思ってたんですけどね、聞いてた人がFAXいっぱいくれました。

 今、延々と「ユーミンスペシャル」やってる間もFAX、来てたFAXなんですが、え〜、S県U市の”クリハラワタル”さん、「『天国のドア』の『SAVE OUR SHIP』をリクエストします」。
 えぇ、それからですね、川崎のラジオネーム”アトベッチ”さんなんですが、「伊集院さん今晩は。私もユーミンが大好きです。なので今日のユーミン特集、すごく楽しみにしてました!」。

 えぇ!?なんでお前、言ってないのに楽しみにしてんだよ!
 初めて明らかになったのに!
 昨日、構成の渡辺君とウロウロしてて決めたことなのに…!



(因みに最初のFAX、イジューインネットの管理人wataruさんのもの。後日、掲示板で言ってました。)


 こうしてネタばらしが無事に済み、残りの時間は通常の放送通りにトークとコーナーが続く。
 そして、ミレニアム1発目の放送も終了したのである。


 後日、インターネットでの話題は「ユーミン スペシャル」一色。
 「やりすぎだ!」、「いや、あれぐらいが面白い」、「もうちょっとユーミン聞きたかった…」等と是非が分かれたものの、概ね理解を示すリスナーが大半であった。

 かくして、「ユーミン スペシャル」は終幕した。
 後に語り継がれる伝説と、大きなトラウマを残して…。


 又、この「ユーミン スペシャル」が、翌2001年1月1日放送「チェッカーズ ベストヒットコレクション」、2002年1月7日放送「甦る 70年代フォークソングコレクション」に繋がっていくことになるのだが…。

 最早、毎年恒例となってしまったこの悪ふざけ。
 果たして来年の正月はどうなることやら…。


※ 参考資料:脳汁さん、イジューインネットさん、神聖リオデジャネイロ王国さん、自家製「深夜の馬鹿力」ライブラリ
※ 文中の
赤字ピンク字はほぼ伊集院さんの口調のまんまです。読み苦しいところは御容赦下さい。




TOP