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過剰接待の現状
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注:98.4/13、98.4/20はスペシャルウィークのためコーナーはなし。
「過剰接待の現状」は98年5月4日放送分をもって終了しています。

98年 3月 30日 4月 6日 27日
5月 4日

 98.5.4 放送 (第134回)  
 伊集院さん聞いて下さい。
 この前僕がいつものように社長室に無断で入り、飾ってある数々のトロフィーを股間に挟んだり挟まなかったりしていた所、突然、取引先の社員と社長が入ってきました。
 慌てて中世のお城にある鎧の中に隠れると、そこは何と過剰な接待の現場だったのです。
 部屋に入った社長は取引先の社員に向かって、ときどき後ろを振り向きながら、
 「指摘したいねぇ。指摘したいねぇ。」
 と、サインを送っています。
 この仕草を見た時、私は接待苦情電話でもやるのかな?と思ったのですが違いました。
 取引先の社員はその社長の仕草をキャッチしてすかさず、
 「あのー、社長。わたくしですね、今度の土曜日、荒川区民会館に全員集合を見に行くんですが、観覧希望人数の所にうっかり『150人』と書いてしまいまして、何とか親戚縁者をかき集めて149名まで集まったんですが、あと1つ席が空いてしまうんですが、これどなたか行って下さる方は、いらっしゃらないもんですかねー、あいやドリフに申し訳がない!」
 「チミィ、わしなら今度の土曜日、スケジュールが空いてるぞ。」
 「社長、それでは土曜日に、お付き合い頂ける…?」
 「まぁチミのためならねぇ。」
 そう、これが接待『志村後ろ』の現場だったのです。

 土曜日の夕方、社長邸にロングリムジンが止まる。
 社長は既に付けヒゲを付けてご機嫌な様子。
 車の中で「オイーッス!」の練習をしながら荒川区民会館へ。
 客席に着き、いよいよ本番。
 いかりやの「8時だよー!」のコールの前に、「全員しゅ…あっ。」とフライング気味に言い、社長に、
 「チミチミ、慌てちゃいかんぞ。」
 と優越感を与えさせるあたりは、さすが接待の王道といったところ。
 が、会場で全員集合を見た事のない社長は、この後舞い上がってしまい、
 「仲本、斜め右!」
 とか、
 「加トちゃん3時の方向!」
 などと訳の分からない掛け声で暴走気味。
 しかし、そこは接待。
 もちろんドリフのメンバーとは話が付いているので、コントは社長の妨害に関係なくスムーズに進行していきます。
 ところがこの社長、大変なひねくれ者で、会場のチビッ子たちが「志村後ろー!」「志村後ろー!」と言うのと合わせて言うのはどうにもエリート意識が邪魔するらしく、肝心の『志村後ろコール』が言えません。
 このままでは接待が台無しになると思いきや、社員もこの事は既に計算済み。
 この日のコントの台本製作にも関わっているという事で、この後、会場が静かになるシーンを盛り込んでいます。
 そして、目立ちたがり屋の社長がこの静かなシーンに我慢しきれず、
 「志村後ろー!」
 さあ計算通り。
 その瞬間、志村の後ろからせり上がる男。
 そして上からタライが降ってきて大団円。
 セットの転換音が鳴る中、誰も気づかなかった事を指摘した事にご満悦な社長。
 そこで『聖母たちのララバイ』のイントロと共に登場した岩崎宏美が社長に向かって、
 「スゴーい!」

 すかさず社員、
 「社長、この夏、堀内ヘッドコーチのホクロシールを売り出す件でございますが。」
 「チミの悪いようにはしないよ、ハッハッハッハッ。」

 伊集院さん、大人の世界というのはこんなに汚いもんなんですか?

 (東京都・PN:秋田風)


 先日、私の会社の営業部の掃除の手伝いをしていると、「社外秘」と書かれた謎のファイルがあったので開いてみました。
 そこには何と、ありとあらゆる接待のマニュアルが。
 そこでその中の一つを社会派の伊集院さんに報告したいと思います。

 その接待は、取引先の社長が股ぐらを押さえながら、
 「めくれたいね。めくれたいねぇ。」
 とつぶやく事から始まります。
 ここで普通の社員ならば、接待『玉袋伸ばし&めくり』かなと勘違いしがちですが、そこは接待マニュアルがあるほどの教育が徹底されているうちの会社。
 このサインを見るや否や、
 「社長、私事で大変申し上げにくいのですが、今度の日曜日、地下鉄南北線の通風口の上に立とうと思っていまして、えーでもーそのー、一人ではちょっと…。」
 すると社長は、
 「何だね、チミィ。一人じゃ寂しいとでも言うのかね?じゃあ他ならぬ君のためだ。私も行こうかな。」
 とご機嫌顔。
 そうです、これが接待ププッピドゥの始まりなのです。

 日曜日、お迎えの長車に乗り込む社長。
 車の中でシャネルの5番うんちくや、ホクロの位置当てクイズなど、軽くマリリンウォーミングアップをするうちに車は地下鉄の通風口前へ。
 車から降りると社員は通風口ではなく、一旦マンホールの上に立つというお約束。
 「チミチミィ、そこはマンホール。そんなとこに立っても下から風は来ないんだよ。チミは分かってないなぁ。」
 「さすが社長でございます。ププッピドゥについては、酸いも甘いも嗅ぎ分けていらっしゃる!」
 「ハッハッハッ、当然じゃよ。チミら若造と違ってワシはねぇ、マリリンが生きている頃を知っておるからなぁ。」
 こうは言うもの、ププッピドゥに関してはキャリア3年の社長、どれが通風口かの見分けこそは付くものの、肝心のスカートが厚手のフェルトで出来ているため、このままでは地下鉄が通ってもめくれません。
 しかしそこは大学をププッピドウ一芸入試でクリアした社員。
 前日のうち通風口にジェット機用のファンを仕込むことを忘れていません。
 しかし社長の素人さ加減も半端ではない。
 通風口の一番風が吹き上がらない場所に立っているので、近くにある街路樹が根こそぎ飛んでいきそうな風力にもかかわらず、社長のスカートはめくれません。
 そこで社員は、社長の大好きなアンドーナツを一番風の来る場所に置いて、「あー社長、こんな所に社長の大好きなアンドーナツが!」と叫びます。
 そこで社長がドーナツを拾おうとしたその瞬間、地下鉄通過。
 社長のスカートがペロリ。
 間髪を入れず、下を通る地下鉄の車両一杯にぎゅうぎゅう詰めのOLがドップラー効果で、
 「スゴーい!」

 すかさず社員、
 「社長、全国のお寿司屋さんの湯飲みに『鯱(シャチ)』という字を入れる件ですが。」
 「まぁまぁ、チミの悪いようにはしないよ。ハッハッハッハッ。」

 伊集院さん、こんな不正を許していいのでしょうか。

 P.S.シャチは寿司ネタじゃないのに湯飲みに入れていいのでしょうか。

 (神奈川県・PN:ラディッシュ)

 98.4.27 放送 (第133回)  
 私の目撃した過剰接待の現状を報告します。

 社長は、取引先の接待社員が会社に来ている時を見計らい、指先で何かをつまむような仕草をしながら、「プチプチしたいなぁ。プチプチしたいなぁ。」とつぶやきます。
 すかさず癒着社員が歩み寄り、
 「あのー社長、私事で恐縮ですが、この所うちの女房の親戚筋で何だかんだありまして、結局昨日の夜、缶入りクッキーが700缶ほど私の家に届きまして、ま、中身に関しては全部食べ終わったんですが、あいにく分別ゴミの収集日を逃してしまいまして、空き缶等の処理に困っております。あ、特にあの、イボイボビニールにはほとほと困っておりまして、もしよろしければ、あ、社長のお知恵を拝借頂けないかなと。」
 普通の常識の持ち主ならば、親戚筋で何があったらクッキーが700缶も届けられるハメになるのか、もしくは1日で700缶ものクッキーを食う方法があるのかが気になって仕方がないところですが、これはお約束の大義名分。
 「仕方がないねぇ。他ならぬ君のためでは。」
 接待『クッキーの缶の中に入っている変なビニールプチプチつぶし』の始まりなのです。

 日曜日の朝、お迎えのリムジンは新車です。
 社長の乗り込んだ後部座席はプチプチビニールに包まれたままです。
 社員は平坦な道にもかかわらず、急ハンドルに急ブレーキを繰り返し、その度に社長のケツの下ではプチプチプチプチ、小粒がはじけて社長はウットリです。
 社員の家に着くと、玄関先にバナナの皮が落ちています。
 「社長、このバナナの皮は決して踏まないで下さいね。もしお踏みになりますと転んで、廊下に積んであるプチプチビニールの山に体ごと突っ込んでしまいますよ。気を付けて下さい。」
 そう言いながら、社長の膝に膝パッドを入れる社員。
 そしてツルッ、コロッ。
 プチプチプチのウハハのハ。
 和室に社長を案内すると、腰掛けようとする社長の下にすかさずプチプチビニール。
 プチプチプチプチ。
 「あーっ、すいません!社長、座布団と間違えてしまいました。」
 はたで聞いていると赤面してしまうほどのプレイが間髪入れずに続きます。
 「社長、今日は、社長と取引先の社員という関係でお越し頂いたのではなく、友人として僕の家の掃除の手伝いに来ていただいたわけですよね?」
 急に改まる社員の口調に少しビビりながら、
 「ん、無論、そうじゃが?」
 「ならば、まずこの雑巾を絞って下さい。」
 プチプチプチプチプチ。
 「しまった!社長、わたくし、雑巾と間違えてプチプチビニールをお渡ししてしまいました!」
 「いいからいいから、間違いは誰にもあるよ、キミィ!」

 しばらくこんな事を続けていると、さすがの社長にも後ろめたい気持ちが湧いてきます。
 難しい物で、この手の連中というのは世間体を気にするのです。
 そこでクライマックス。
 社員は自ら自分の家に火を放ち、ボヤを出します。
 一酸化炭素がもうもうと部屋に立ちこめてきます。
 「社長ー!このままじゃ酸素が足りませーん!一刻も早く空気をー!」
 「しかしー、チミィ!」
 「そこの押し入れの中に偶然、一粒直径20cm、1mあたり150粒のプチプチビニールが、50m入ってます!それを潰せば空気が!社長、人命がかかっていまーす!」
 ボッフボッフボッフボッフ。
 快感と一酸化炭素でフラフラの所に、窓を突き破って消防隊が乱入。
 二人を担ぎ出します。
 社員も、意識もうろうとしながら、
 「社長…死ぬ前に、プチプチビニールの正式名称を教えて下さい…。」
 「チミィ…エアキャップじゃよ…。」
 すると、周りにいた消防隊員が銀色の防火服を脱ぎ、全員OL姿になり、
 「社長さん、スゴーい!」

 ここですかさず、
 「社長、今回の、かまぼこのへりにピンク色を付ける、食紅入札の件ですが。」
 「分かっているよ。悪いようにはしない。」

 こんな腐敗があっていいのでしょうか。

 (埼玉県上尾市・PN:明治維新)


 伊集院さん、ついに我が社でも過剰接待の現場を目撃してしまったので報告します。

 これは、我が社一の営業マン・中村と一緒に取引先の社長に会った時の事です。
 「はーあ、埋めたいなぁ。埋め尽くしたいなぁ。縦から横から、埋め尽くしたいねぇ。」
 と、鉛筆をくるくる回しながらつぶやく社長。
 そこに中村が手揉みをしながら、
 「社長、実は今度の日曜日、我が家で読売新聞のクロスワードパズルに挑戦しようと思っているのですが、無知なわたくしどもだけでは不安で、もしよろしければ手伝って頂けないでしょうか?」
 すると社長は、
 「ハッハッハッ、しょうがないなぁ。まぁ他でもない君の頼みとあっちゃなぁ。」
 「本当ですか!?社長。ありがとうございます。社長がいて下されば、賞金の図書券500円分は貰ったも同然です。」
 「おいおい、ワシをおだてても何も出んぞ。アッハッハッハッ!」
 と、スキップをしながらその場を立ち去る社長。
 そうです。これが、接待クロスワードパズルの現状なのです。

 日曜日、早速ロールスロイスで社長をお出迎えの中村。
 小学校2年生の付録の3×3のクロスワードでウォーミングアップする社長を乗せ、中村家へ。
 読売新聞を広げ、1分も経たないうちに中村は頭をクシャクシャに掻きむしりながら、
 「社長、すいません。ここの、タテ2のクエスチョンがどうしても分からなくて。」
 と泣きつきます。
 社長は、
 「あー、どれどれ。」
 と身を乗り出し、
 「春は、これを見ながら酒でも飲んでドンチャン騒ぎか。うーん。確かに難解じゃな。」
 と考え込みます。
 答えは当然「桜」。
 しかしこの社長、
 「春、ドンチャン騒ぎ。うーん…ハム?2文字だしなぁ。」
 と、どこをどう工夫したらそんな答えが出せるんだろうというようなお方なのです。
 しかし、東京大学クロスワード学部を首席で卒業した中村。
 もちろん抜かりはありません。
 さりげなく、
 「あ、社長。そういえば今日は何日でしたっけ?」
 と質問。
 ここで社長、ふと正面を見るとバカデカいカレンダーが。
 もちろんそこには綺麗な桜の写真。
 しかも社長と中村は向かい合って座っているので、社長からはそのカレンダーは見えても、中村には全く見えないという仕組み。
 社長は満面の笑みを浮かべつつ、
 「何だねチミ。こんな問題も分かんないのかね。桜じゃよ、桜!」
 「はー!!そうか!!ぜーんぜん思いつかなかったよぉ!」
 と、ダチョウ倶楽部並のオーバーリアクションで、自分の額をパンパン手で打つ中村。
 そう、実は中村は今朝の4時半に新聞が届くと、2分でクロスワードを全て解き、答えを部屋のありとあらゆる所にヒントとしてセッティング。
 社長が分からなかった時に、それをそれとなくいかにも自分で答えを出したように仕向けるのです。

 とまあこんな茶番を繰り返し、社長のご機嫌も最高潮に達し、いよいよ最後の1つ、ヨコのカギ21です。
 「女性は靴下の他にもこれを履きます。伝線したりもします。」というヒントと、最初の文字が「パ」。
 しかしここまで来て、社長は、
 「パナマ運河…ではヨコのカギが合わないなぁ。」
 と、意味不明な言葉を発しています。
 ここはラスト問題。
 クライマックスはこれまでのような安易な答えの導き方ではいけません。
 クロスワード八段・黒帯の中村。
 即座に作戦を実行。
 「社長、少し疲れましたね。お茶でも飲みましょう。あー、すいません社長、ちょうど今おちゃっ葉を切らしてまして、今からワイフに買いに行かせますので、その間はテレビでも見ましょう。」
 さりげなくテレビのスイッチをオン。
 これが中村の仕込んだ『クロスワードクライマックス作戦X』のスタート合図なのです。
 テレビには無線が仕込んであり、中村の、
 「あー、ヨコ21さえ完成すればな。」という言葉は、作戦部隊に全て筒抜け。
 それから10分程した後、テレビにニュース速報が。
 「たった今、銀行に強盗が押し入りました。それでは現場からの中継です。」
 え、まさか!?とお思いでしょうが、我が社の接待部隊を甘く見てはいけません。
 テレビに映し出された銀行には、我が社の秘密社員が顔に「パンスト」をかぶって立て籠もっているではありませんか。
 それを見て社長がポツリと、
 「パンストなんてかぶっちゃって…。…パン?パ、パンストだよ。チミ、さっきの答えパンストに違いあるまい!」
 「社長、さすが社長!いやー、パンストかぁ!恐れ入りました!」
 その瞬間、銀行で人質となっていた女子銀行員が一斉にスタンドアップし、テレビカメラに向かって、
 「スゴーい!スゴーい!社長さんスゴーい!」
 の大合唱。
 「あーいや、まぁ、うん、うんまぁ、それほどでも。う、うん。いやまあ最初は少し君に花を持たせようと思ってじらしていた面もあるんだがね。」

 「ところで社長、こないだの、植田まさし先生引き抜きの件なのですが。」
 「わかっちょるわかっちょる、みなまで言うな。チミの悪いようにはせんよ、ハッハッハーッ。」

 伊集院さん、このように社員の犠牲を出してまでの過剰接待、こんな事が許されていいんでしょうか。

 (千葉県柏・PN:山手線外回り)

 98.4.6 放送 (第130回)  
 僕の掴んだ過剰接待の現状を報告します。

 まず、社長がこれ見よがしに、握り拳の親指だけを突き立てたポーズを数回繰り返しながら、「プレーしたいなぁ。プレーしたいなぁ。プレーしたいなぁ。」とつぶやきます。
 ここで一般の人間ならば、「ああこれは、接待指相撲なのだな」と早合点してしまいますが、取引先の癒着社員はその親指突き立ての回数を見逃しません。
 3回、ということは、接待トリプルプレーの要求なのです。
 すかさず社員は歩み寄り、「社長、実は今度の日曜日にわたくしの所属する草野球チームの試合があるんですが、うちのサードがルイス級なんです。もし代わりにサードが守れる右投げ右打ち61歳、工業高校卒の叩き上げがいてくれれば勝てるのに、残念な話ですよねぇ。」と、漠然としたつぶやき風味のピンポイントお誘い。
 待ってましたとばかりの社長もここは一つ、嫌ーな笑顔を浮かべて「あーチミ、ワシは該当する選手を一人知らないでもないよ。」
 「えー、一体誰ですか?」
 「ワシじゃよ。」

 回りくどい小芝居もつつがなく終了して日曜日、社長の家の前にやってきたお迎えの車は野球帽をかたどったリリーフカー。
 もちろんリムジン。
 国鉄スワローズのユニフォームをビシッと決めた社長はご満悦。
 球場に向かう途中も、カネやんのドロップがどれだけ凄かったかや、別所の眉毛が白くなった理由など、もうなんべんも聞かされたトークをエンドレスで喋り続けるはしゃぎよう。

 土手の球場に着いた。
 社員にとってはここからが接待の腕の見せ所。
 事が大きくなっては、どこからこの不正が漏洩するとも限らないから、他のメンバーは誰もこの計画を知らないという極めて厳しい状況で、社員はマウンドからずば抜けた制球力で中の上のピッチングを続け、ホットコーナーで「バッチコーイ!バッチコーイ!」と叫び続ける社長が飽きてきた頃を見計らって、己の爪を叩き割り、程良い泣き言を言っては社長から得意の根性論を頂き、バッターボックスで70級連続でファールを続けてから三振し、次のバッターの社長にへろへろ球を投げさせてヒットを打たせたりとそつがない。
 あれよあれよという間に9回の裏、得点は4対3で1点リード。
 これが接待草野球ならこのまま抑えて勝てば大成功なのだが、社長の願いは3ランクも4ランクも上の接待トリプルプレー。
 まずはノーアウトからくさいボール球で連続フォアボールを与えて1塁2塁。
 さらに、とっくに解読していた敵のサインがヒットエンドラン。

 ここだ、ここしかない。

 「社長、社長、3塁ベースの上に吉永小百合のブロマイドが落ちてますよ。」
 すかさずど真ん中低めに打ち頃のストレートを投げ込む。
 打った打球は計算通りの火の出るようなピッチャーゴロ。
 社員は球を大回転キック。
 これがベース上の社長のグローブにストライク。
 ワンナウト。
 そのまま社長に駆け寄り社長をボールごと背負い投げ。
 社長が2塁ベースの上でワンバウンドしてツーアウト。
 さらに走ってきた1塁ランナーに人間魚雷をかましてスリーアウト。
 トリプルプレーの完成。
 事態が飲み込めずに、「あれっ、吉永小百合は?」などとつぶやく社長が我に返る隙も与えず、観客席一杯のOLが人文字で「すごーい!」の文字を。
 そのままグランドになだれ込んできて「すごい!すごい!」社長を胴上げ。

 上下する社長に合わせてジャンプしながら社員のとどめ。
 「えーところで社長、こんな所でなんですが、例の、水ようかんに付いている小さいさじの独占販売の件ですが。」
 「分かっとる。チミの悪いようにはしないよ。ハッハッハッハッハッ!」

 このような事がまかり通っていていいのですか、伊集院さん。

 (東京都中野区・PN:テレフォンもんがもんが)


 過剰接待の現場を僕も目撃してしまいました。

 社長は取引先の社員の姿を見かけると、ポケットからつまようじを取り出し、机の上のMONOの消しゴムをプッスプス刺しながらつぶやく。
 「美味しいもんが食べたいねぇ。」
 社員は、全て承知したと言わんばかりに、「社長、私事で恐縮ですが、明日、イトーヨーカドーに行こうと思っていた所です。もしよろしければご一緒いただけませんでしょうか?」
 「んーそうかね、まあそれ程まで言うのならいいだろう。」
 これで接待の前準備が整いました。
 グルメ接待にイトーヨーカドー?一体なぜ?
 そんな生易しい接待で社長は落ちません。
 あの仕草。そうです。食品コーナーの試食接待なのです。

 当日、イトーヨーカドーの前に社長を乗せたリムジンが現れました。
 食品コーナーに着くや否や社長は「見たまえ、チミィ。コロッケだよぉ。今日はこてっちゃんもあるよぉ!」と大はしゃぎ。
 ここで社員は、漬け物コーナーの試食に一目散。
 しば漬けをモリモリポリポリ。
 しかし、これはツッコミ待ちの計算です。
 そこで社長が「ダメだね、チミィ。そういう物は箸休めなんだから、とっとかなきゃ。口がパープルだよ。」
 「すいません社長!わたくし大好きだったもんで。いやぁしかし社長ともなると、食べる順序まで分かっていらっしゃる。」
 この社員、実はダイエー・パリ店で修行した試食ソムリエライセンスA級の腕前。
 たかだかアマC級の社長に分かり切ったうんちくを訓示されるのはうんざりですが、そこは大人と感心したふり。
 「そうかね、アハハハハハハ。」
 対して社長はC級どまり。計画性もなく安いおかずをモリモリモリモリ食べています。
 しかしそこは社員がまたケア。
 隙をついて試食に胃薬を仕込み、消化を良くしておきます。
 これで満腹にはなりません。
 さらに社員は、売り物に手を伸ばして叱られるというお約束のボケを社長にたしなめられ、社長の優越感をどんどん上昇させて頂きます。

 そしていよいよメインディッシュの高級ハム売場。
 ここで社長にとどめを刺します。
 期待を胸に高級ハム売場に近づく社長。
 サイコロ状の特選ロースが焼けるホットプレートまであと30cm。
 その刹那、社員の姿が風に揺らいだ。
 300度のプレートを素手でチョップ。
 空中を舞う12個の特選ハムを逆の手で全て掴むと左ポケットに収納。
 チョップした方の手で胸ポケットから賞味期限切れの魚肉ハムの角切りをプレート上にばらまく。
 この間、100分の1秒。
 ビデオカメラにさえ収まらない早業。
 これが高級ハムかね。見た目では分からないレベルの社長ですが、一口食べればさすがに分かります。
 「これは高級ハムじゃないな。」
 すると同時に、買い物のOL風綺麗所のサクラ女子社員が「すごーい!一口食べただけで分かっちゃうなんて社長グルメ!」
 一斉に拍手&喝采。
 「そうかね、そうかね。」
 すっかり上機嫌の社長。

 そこですかさず社員が小声でささやきます。
 「ところで社長、都電荒川線の町屋二丁目駅の名称を、『ニセ町屋』に変えるプロジェクトの件ですが。」
 「チミの悪いようにはしないよ。アッハッハッハッハッハッハッハッ!」

 ビッグジェネラル伊集院、大人ってこんなに汚いもんなんですか?

 (福島県いわき市・PN:じん六さんの宴)


 僕の入手した過剰接待の現状をリポートします。

 社長は取引相手のカモ社員を見つけるとこう言います。
 「ゲームがやりたい。タダで。電気代すらも。」
 こんな不親切なスリーヒントで完璧に全てを飲み込んだ社員。
 「社長、わたくし今度の日曜日に秋葉原のラオックスゲーム館の店頭でプレステをやりたいと思うんですが、一人プレイはなにぶん淋しくて、こんな事を言える立場ではありませんが、よろしければ社長に、あのー、そのー。」
 口ごもりからぴったり30秒。
 「他でもないチミのためなら、付き合ってやらん事もない。」
 儀式終了。
 ここからが接待店頭ゲームの始まりです。

 当日の朝、社長のリムジンの中で「いやー、夕べは社長とご一緒できると聞いてつい興奮してしまって練習してしまいました。」と紙にプレステのコントローラーが描いてある絵を見せ、「おぉ、空想プレイだね。いやいや、感心感心。」と、今日が楽しみで楽しみで待ちきれなかったように見せ、社長の気分を盛り上げます。
 そして着いたラオックスゲーム館。
 ここで社長にもうワンプッシュ。
 「しゃ、社長!まだ開店したばかりでスイッチが入ってない状態です。いやーでもしかし私には、本日の初プレイをする勇気など。」
 「チミィ、しょうがないなぁ。どれどれ、ワシが初プレイをしてあげよう。」
 ニヤニヤしながらピカピカのプレステに手をかける社長。
 ボウェーンボワーンボワーン。 お店のゲームのスイッチオン。これほどの快感はないことだ。

 ゲームを交代でやっていると徐々にギャラリーが集まってくる。
 この視線こそが社長の快楽の源。
 ほどよく焦らしたところで凡ミス。
 「ダメだぁ、ぼかぁ人に見られるとついミスをしてしまうんだなぁ。」
 「チミもまだまだ若いのう。うらやましいぐらいじゃ。あーどれどれ、ワシが敵を討ってやろうかのう。」
 「社長、ぜひわたくしの敵を。」
 すっかりハイにさせられた社長は一種のトランス状態。
 全てが計画通り。『ファミッ子大集合』の会場で幻の名人と噂されているこの社員と、中野のおもちゃ屋でやや上手いかなと言われたり言われなかったり程度の社長では、実力の差は歴然。
 しかし、能ある鷹は爪を隠し、中ボスクラスを倒してはいい感じでやられて社長がコンティニューという絶妙な接待プレイ。
 しかも社長がミスるとすかさず電源コードにつまずき画面を消し、「私の不注意さえなければ今頃どれほど凄いハイスコアが出ていたやら」と土下座に号泣。

 そしていよいよ最終ボス。
 緊張でガッチガチの社長は今にもやられそう。
 「あのオヤジさすがにもうダメだな」というギャラリーの声を合図に、背後から社長の背広に滑り込む社員。
 二人羽織プレイである。
 瞬く間に全てをクリア。
 初めて見るエンディングの絵と、急に上手くなった自分のプレイに目をパチクリの社長。
 そこですかさず、店頭全てのモニターに映し出される女子社員のコンピューターグラフィックが一斉に、
 「すごーい!すごーい!すごーい!すごーい!」

 うっとりする社長にプレステの2コントローラーを改造してあらかじめ取り付けていたマイクで社員が切り出す。
 「社長、例の、恥骨砕き専用木槌の特許なんですが。」
 「チミの悪いようにはせんよ、アハハハハハハ。」

 伊集院さん改め大将軍、これどう?

 (PN:新世紀アバンギャルド)

 98.3.30 放送 (第129回)  
 私が勤めている会社も接待の嵐が吹き荒れています。その実態を今日はリポートします。

 まず社長が「野球が見たいなぁ」とつぶやきます。
 これをそのまま受け取って東京ドームの巨人戦のS指定席のチケットを用意しただけでもこれは立派な接待プロ野球観戦なのですが、そんなありふれた接待ではすぐにマスコミが嗅ぎ付けてしまいます。
 この社長と取引先の社員は既にツーと言えばカー。「おばちゃんいつものと」言えばうずら豆うどん一丁という程の以心伝心の癒着コンビ。
 社員はこの時、社長が立ったり座ったりしていることを見逃しません。

 「社長、そう言えば私、偶然明日の広島市民球場の外野席のチケットを、ペアで持っているんですが、どうでしょう、江藤コール?」のお約束の誘い水を出し、社長のミエミエの「そうかね。まあ、プラチナチケットを無駄にするのも何だしね。」などという言葉を引き出します。
 広島−阪神戦の外野席チケットを偶然持っている事も、それがプラチナになっている事も、一般常識とはかなりかけ離れているはずなのに、それがまかり通っている現状こそが、この接待広島の江藤の応援の恐ろしいとこです。

 翌朝、社員はリムジンでお出迎え。
 フロントの朝日新聞とかの小さい三角の旗が立っている所に『カープの4番33』という小さい旗がひらめいているのを見つけて、既に社長は上機嫌。
 球場に着き、カープ側の外野席に2人並んでちょこんと腰を下ろすと、社長はもう立ったり座ったりしたくてたまらないご様子。
 「ホームランボール取れるかな?取れるかな?」と欲望丸出しの社長。

 そしていよいよ初回から江藤が打席に入った所で、社員の絶妙な駆け引きが展開します。
 いきなり息を合わせて交互に立ったり座ったりが成功すると、社長に自分が江藤の応援上級者だということがバレ、お世辞にも中級者レベルの社長が不機嫌になってしまいます。
 まずは間違って同時に立ってしまったり、座った時にコーラをひっくり返すといった道化ぶりを披露して社長に「チミもまだまだ甘いねぇ。最初の「えーとーう」で膝のバネをためて…」などと、分かりきったアドバイスをさせ、大きなリアクションで納得、感心し、頃合いの良い所で社長のズレたリズムすら調和させるタイミングで立ったり座ったりを合わせる、超高等テクニックで社長を知らず知らずのうちに虜にし、圧巻は7回の裏、江藤のホームランが出た所で、蝶が舞い蜂が刺すようなジャンプ。
 しかもわざとヘディングで社長の手のひらにすっぽりとホームランボールを送り込み、狂喜乱舞する社長に追い討ちをかけるように、予めビール売りに化けさせて仕込んた女子社員の「スゴーい!」コール。
 「スゴーい社長さーん!」

 ここですかさず「社長、実は、例の模造イクラ製造プラントの件ですが、どうぞ我が社に。」
 「わかっとるよ。チミの悪いようにはしないよ、ハッハッハッ。」

 このような完璧な公私混同が許されるのでしょうか、伊集院大将軍様。

 (横浜市都築区・PN:スパーキンググロー友の会22歳)


 伊集院さん、僕のキャッチした過剰接待をリポートします。

 まず社長が取引先の社員にだけ聞こえるような声で「騙されたいなぁ。」とつぶやきつつ、空を掴むような仕草をします。
 これが接待トリックアート開始のサインです。
 ここですかさずやり手営業社員が、「社長、今度の日曜日に船橋の不思議な絵の館に行くのですが、一人じゃどうも心細くて。」と上手くトスを上げ、「何ならわしが付き合ってあげてもいいがね。」と、社長のごっつあんスパイクが決まります。

 日曜の朝早く、わざわざ社長宅前までタクシーでお出迎え。
 しかしこのタクシー、ドアがあるべき所にはドアの絵があり、実際にはリムジンの前半分にリアルなタクシーの絵を描き、リムジンの後ろ半分の風景だと思っていた所も実は立体的な絵で、そこが座席という、まさに接待トリックアート専用車。
 不思議な絵の館に着くや否や、ウェルカム・ザ・不思議ワールドの看板の下の嘘の入口に激突する社長。
 ここで吹き出すどころか「はっ、さすが社長だ。トリックアートの楽しみ方を熟知していらっしゃる。」と見事なフォロー。
 返す刀で「君、大人2枚。」と嘘の係員に声をかけ、さらに一押し。
 「君、僕はねぇ、この世で一番尊敬している人を連れてきているんだよ。早くしたまえ。早く!」と激怒。
 「チミチミ、それは絵だよ。」のツッコミを待ち、「うわぁー、全く気づかなかったぁー!!」と赤面する、見事なアクターっぷり。

 「誰でも最初はこんなもんなんだよ。ハッハッハッ!」とかなりの上機嫌。
 こうなれば完全な接待ペース。
 歪んだ鏡に映る幅の広がった自分を見ては、「わしがびろーんとなってるよ。愉快だねぇ。愉快だよ。」
 首の伸びる貴族の絵を見ては、「ニュルニュルニュルニュルだねぇ、おい。どういう仕掛けなのかねぇ。」と大ご機嫌。
 とどめは無数の美人画の部屋での事、わざとデッサンのちょっとおかしい美人画を用意。社長に誘導尋問的に見破らせる。
 「チミィ、これはどっかおかしいぞ。」
 ここで周りの美人画全てが社員の仕込んだ女子社員にすり替わっています。
 社長にうろたえる暇さえ与えず一斉に「すごーい!!」の嵐。

 このチャンスを逃したら接待のプロフェッショナルとは言えない。
 「社長、例のものまね四天王のおもしろCDの件ですが。」
 「わかってるよ。チミの会社の悪いようにはしない。」

 社会派伊集院さん、こんな社会腐ってると思いませんか?

 (北海道・PN:ヘヴンズゲイト)